稲垣吾郎主演舞台『サンソンールイ16 世の首を刎ねた男—』が深みを増して待望の再始動!

2023.4.20更新

突然の中止から2 年、18 世紀のフランス革命が舞台となる『サンソン ールイ16 世の首を刎 ねた男—』が、4 月14 日に東京建物 Brillia HALL で開幕、前日にはゲネプロと取材会が行 われました。舞台ではロベスピエール、マリー・アントワネット、ルイ16 世らの首を刎ねた死刑 執行人、シャルル=アンリ・サンソンの苦悩と葛藤が描かれます。過酷な時代に彼が背負っ た宿命とは…

理不尽な社会に対する苦悩と葛藤
シャルル役・稲垣吾郎が群衆をかき分けて舞台中央に登場すると、そこは裁判所。身分を明 かさず食事を共にしたと訴えられた理不尽な裁判です。当時は世襲で職業が決められ、死刑 執行人は法を執行しているだけでありながら、人々から忌み嫌われ市民権も与えられません。
その差別に反論するシャルルの言葉には説得力があり、舞台に引きつけられます。

父・バチスト役は前回同様、榎木孝明が務め、序盤から死刑執行の重いシーンが続きます。
家業として死刑を執行しているサンソン家はキリスト教徒でもあり、命を断ち切ることに矛盾 を抱え、開業医として人の命も救っています。貴族は斬首、平民は絞首、親殺しは車裂きの 刑に火あぶり、と身分制度の問題に加え、刑の残忍さがクローズアップされますが、刑の執 行という仕事に胸を張って生きたいと思う気持ちと、残虐性を否定し死刑廃止を望む気持ち の葛藤から、親子でぶつかります。

国王への敬愛
ルイ16 世・大鶴佐助からは、王政800 年の重さを背負っている切なさが感じられます。独特 の存在感が光り、最期を迎える瞬間は本当にパリの断頭台にいる感覚に陥り、この言葉を最 後まで聞きたいと思わせる強さがありました。

ルイ16世を敬愛するシャルルは、大切な人を自分の手で処刑しなくてはならない宿命に苦 しみ、その表情・立姿・後ろ姿からもその気持ちが痛いほどに伝わってきます。

勢いのある新キャスト
 親殺しの罪で車裂きの刑を宣告されたジャン=ルイを演じる劇団EXILE の佐藤寛太は活力 にあふれています。罪を受け入れ罰を求める潔さ、迷い、優しさ、場面ごとの感情がまっすぐ 届きます。ギロチンを製作する職人・トビアスを演じるのは、2.5 次元舞台で不動の人気を得 た崎山つばさ。ジャンを助けるために積極的に動く姿には力強さを感じます。

フランス革命という、これまで幾度となく題材になってきたこの時代を、死刑執行人の立場か ら見ることで、職業・宿命・葛藤等、今までとは違う視点が生まれ、なぜギロチンが作られたの か、その理由も見えてきます。

うつろいやすい民衆の心
生まれにより人生が決まってしまう、不条理な世の中で不満が広がり、それはやがて狂気と なっていきます。些細なことで状況は変わり、平等とは何かを考えさせられます。民衆の叫び は、初演メンバーと新キャストが溶け合い、勢いと熟成が感じられるものでした。

クリエイター陣には、2015 年から3 度に渡り上演されてきた稲垣吾郎主演舞台『No.9—不滅 の旋律—』を手がけた演出・白井晃、脚本・中島かずき(劇団☆新感線座付作家)、音楽・三 宅純が集結。個性豊かな俳優たちと最高の舞台を作り上げます。

稽古場での様子
公開ゲネプロの前には囲み取材が行われ、稲垣吾郎、大鶴佐助、崎山つばさ、佐藤寛太が 登場。崎山が「稲垣さんが皆を細かく見てくださっていた」と明かせば、稲垣は「僕はシャイな 部分があるので、話しかけづらい雰囲気があった」と答えます。すると大鶴・佐藤からは一斉 に「ずっとワインの話をしていたじゃないですか!」と突っ込まれ、「サンソンとルイ16 世の関 係は、見方によってはラブストーリー。舞台が終わったら皆でワインを飲む時間を持ちたいと 思います」と終始和やかな雰囲気でした。

稲垣吾郎の思い
「サンソンは坂本眞一先生の『イノサン』というマンガ、安達正勝先生の『死刑執行人サンソン』 で興味を持ち、是非これを舞台でやりたいと提案しました。歴史の教科書に載っているような 人物ではないけれど、裏舞台で活躍した人間がいたことを知っていただきたいです。今の僕 にとって舞台とは、無理なく素直に自由で、1番自分らしくいられる場所です」。

サンソン家の苦悩と葛藤は、時代を超えて私たちの心身に深く食い込んできます。再始動ま での2 年の月日には意味があったのだと思わせてくれる内容であり、前回より確実に深みを 増した「稲垣吾郎の代表作」と言えるものでした。

舞台『サンソン ールイ 16 世の首を刎ねた男—』

演出:白井 晃

脚本:中島かずき(劇団☆新感線)

音楽:三宅 純

原作:安達正勝『死刑執行人サンソン』(集英社新書 刊)
坂本眞一 『イノサン』に謝意を表して

出演:稲垣吾郎
大鶴佐助 崎山つばさ 佐藤寛太 落合モトキ 池岡亮介 清水葉月
智順 春海四方 有川マコト 松澤一之
田山涼成/榎木孝明

今泉 舞 岡崎さつき 小田龍哉 加瀬友音 木村穂香 久保田南美
熊野晋也 斉藤 悠 髙橋 桂 チョウ ヨンホ 中上サツキ 中山義紘
奈良坂潤紀 成田けん 野坂 弘 畑中 実 古木将也 村岡哲至
村田天翔 ワタナベケイスケ 渡邊りょう

【東京公演】2023 年 4 月 14 日(金)〜4 月 30 日(日) 東京建物 Brillia HALL

【大阪公演】2023 年 5 月 12 日(金)〜5 月 14 日(日) オリックス劇場

【松本公演】2023 年 5 月 20 日(土)〜5 月 21 日(日) まつもと市民芸術館 主ホール

チケット料金(全席指定・税込):S 席 13,500 円、A 席 10,000 円/(松本公演のみ)B 席 7,500 円

公式ホームページ:https://sanson-stage.com/

取材・文:島田薫  
撮影:引地信彦